ロルフィング(R)とは
ロルフィングは、アメリカ人のアイダ・ロルフ博士によって開発されたボディーワークです。
ボディーワークは言葉で表現するのは難しいのでが、一般的に言われる代替療法は、多くが治療を目的としています。治療を目的としないが、体をより良く改善するために考えられた方法として作られたものとでも言いますでしょうか。
たとえばピラテスは、今では健康を目的として普及していますが、元々は、第一次戦争中に戦場に出て負傷した兵隊さんを、もう一度戦地に返す為のリハビリを目的として作られました。
この様な場合、何らかの刺激を体が受けて、治癒機能や運動機能が回復に向かい効果が生まれる一例だと思います。現在のピラテスがその初期と同様の結果を生むかどうかは分かりません。
この様な考え方から言えば、多くのボディーワークには、元々個別のビジョンがありその考え方に基づき作られているわけです。
各種療法にしても同じ様に体に対する健康というビジョンから出来ていて、肉体レベルやエネルギー体レベルの変化を促すというものになると思います。
ですから、どの様な内容の手技なのかを理解するというのは受ける側にとって重要であるでしょう。
私の知る範囲では、ボディーワークは、体の一部と言うよりも全体性を根本に考えられたものと表現できると思います。他に、日本では野口整体など、ロルフィングと同じ時代に完成されたものでは、アレキサンダーテクニック、フェルデンクライスメソッドなどがあります。
ロルフィングは、身体構造を重力に関連づけて体をよりよくバランスする方向に向かえるようにします。それが統合された体なのですが、構造的にあるいは動きのスムーズさも同様に目的として取り入れています。
この10回のセッションを、「ベーシック10」と呼んでいます。
ロルフィングの特徴
身体の深部からバランスして整える
ロルフィングの特徴はいくつかあって、身体構造と重力を関連づけて体の機能を改善することで、その結果、頭、腕や足、胴体、内臓、骨、靭帯、腱など関連する各器官の連携が図られることでスムーズな動きが生まれる。
この連携というものは、筋膜が各器官と繋がっているということに関係があります。さらに、膜が緩むということで関節などの可動域が広がる体験をします。筋膜リリースの手技でも同じ体験をしますが、その弛緩範囲はそれ以上に広範囲に感じられる場合もあります。
また、知覚(五感)がより敏感になるので、空間と体、外界と体の中心軸の感覚が明確になることも体験します。どういうことかと言いますと、まず、地球に重力があるということは、上下縦方向の影響があるわけですから上方と下方の空間を感じられるかどうかということです。
上下を感じる為には、背骨がその周りにある脊柱起立筋などの動きに対して制限が無くなっているかどうかということで、より明確になります。
制限のない背骨は自由さがありエネルギーが流れているような状態であり、体の真ん中に存在するように感じることが出来ます。
そうでない状態は、体全体が軸としか感じないので背骨が軸であるということは感じることは出来ないと思います。
次に構造的な全体のバランスが回復されるという特徴です。
これは、長期的な安定感が体に生まれることを意味します。特に体の縦軸、横軸をバランスさせると言った場合に何をイメージしますか。縦軸は、背骨ですよね。頭の骨。頸椎、胸椎、腰椎、仙骨尾骨までの軸骨格を言います。
横軸は、肩(ショルダーガードル)、胸骨内の横隔膜、骨盤(骨盤底の筋群)、膝の後、足の裏、口の上顎のアーチ、小脳と大脳を分けている膜(小脳テント)などです。
これらが、全体的に水平、垂直、捻じれを伴わずに三次元的にバランスされていく状態です。さらに、10回の構造的な変化を体験するので、その時ごとに、体のバランスを取りながら進めます。
ということは、第1セッションのバランスと第10セッションのバランスで、大きな差がおこります。
最後に、structural Integration、という意味は、構造を統合するという意味です。
10回の施術には毎回深く考えられた意味がありますから、統合された体はそのプロセスを受け入れた結果になります。特に、精神的な恐れは、変化を止めてしまうかもしれません。
新しいバランスや動きをうけ入れようとする時には、ロルフィングは体験の違いを与えてくれると思います。
筋膜リリース
最近では、雑誌等で筋膜マッサージというものが取り上げられています。筋膜をマッサージするというのは、少し違和感を感じます。
筋膜は薄い膜ですので、筋繊維の様にマッサージが出来るのかどうか少し疑問ですが、それはさておき。
筋膜は、半分固体の様なゲル状のもので、ストレス等の刺激により硬くなったりします。逆に、圧力をかける等のやり方で、ゲル状になり伸びてゆき元の性質に戻ることが出来ます。
最近は電磁波を出す電気製品(携帯電話、タブレット)を持ち歩いたり、会社や家庭でもPC等の製品を使いますが、これらの影響が筋膜の整合性を失う要因であるとオステオパシーの療法家から聞きました。
ロルフィングではとくに、“筋膜”という身体の深い部分に着目し働きかけます。筋膜は浅い浅筋膜と深筋膜に分かれています。
筋膜は私達の骨、靭帯、腱、筋肉を結び付ける役割や内臓や脳を覆う薄いものまで、体の一部分であり広範囲に存在するネットワークでとても切り離せない存在です。
動物でも同じですが、筋膜が無かったら重力の存在下でこれほど柔軟に体を動かせないでしょう。つまり、張力をそれらが補い全体のバランスを脳と連携しながらとっているものです。
筋膜は ストレス(精神的なことも含まれるでしょう)や、かたよった体の使い方のせいでねじれたり、伸びすぎたり、縮んだり・・・・・
そうした、外的や内的な要因が重なると一度姿勢が崩れると筋膜の強さから一般的に歪んだ状態になります。
たとえば、背骨に近い部分での影響などは、神経系に影響を与えて体調不良の原因になったりもします。
たとえるなら筋膜は、私達を包みこむ『ウェットスーツ』。骨は支えの部分ですが、中枢神経と末梢神経系に続いています。 でも、もしもそのスーツが一部縮んでいたらどのようにイメージすることが出来るでしょうか。歪んでいた圧力は、構造自体に影響を与えているように思えませんでしょうか。
というようなことが、人生を長く体験している体で起きているかもしれません。
ロルフィングの効果
- ストレス、疲労改善
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循環器機能の改善 (第一セッションで胸郭と骨盤の張りが回復する為に息が吸えるようになるから)
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身体能力の向上 (スポーツ、ダンス、太極拳などの体を動かすことをされている方)
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歪みや猫背、姿勢の改善 (結果として、プロポーションの改善になる。水平垂直などのアライメントを整えるため。)
- プロポーションの改善 (委縮から解放に向かうので、スポーツ、ダンス、太極拳などの体を動かすことをされている方にとって可動域の制限が緩和される為)
- 肩こり、腰痛、鞭打ちなどの症状の改善 (身体構造のバランスと筋膜の委縮が起きた結果です。過去に起きたことで、長期にその状態が続いている場合には改善されない場合があります。)
- 結果としての効果 (モチベーションの向上、運動をしたくなる、歩きたくなる、体の感覚がよみがえる、余計に体が動かせる、などの受けた人の感想があります。また、逆にバランスが崩れてくることが判り違和感を感じることもあります。
ロルフィングを受けるときの注意
以下の症状をお持ちの場合はあらかじめ病院で適切な診断を受けてください。症状が悪化する恐れがあります。
- 急性病
- 悪性腫瘍
- 急性中毒
- 急性炎症
- 出血性疾患
- 外傷
- 重内臓疾患
- リュウマチ
- 膠原繊維に関する問題など、ロルフィング協会禁忌事項を参照してください。
ロルフィングはどのくらいのペースで受ければいいのか
週1回から月2回などと言われています。私の体験から言うと、月に1回程度でも変化はしてゆくと思います。しかし、体に大きなダメージを受けた場合には、一般の方よりも変化のスピードは緩いと思っていただいて10回以上を考えるとよいと思います。10シリーズ以外に、数ヶ月に一度のセッションが必要になると思います。
セッションの効果はずっと続くのか
年齢等により身体の状態が変わりますので、必ずしも永久とは言えないと思います。各セッションで出されるエクササイズをしていただくことが、効果を長持ちして行くことになります。
人によって個人差はありますが、セッションのたびにさまざまな身体の変化を感じられるはずです。構造や動的な記憶は脳にあります。たとえば、歩き方などはそれぞれ個性があるということは知られています。
そういったことを変える時には、最初はそこに注意を向ける必要があると思います。そして、新しい動きに慣れていかなければならないでしょう。もし効果が戻ったと感じるならば、日常のパターンを変えるということも考慮いれて自分で注意しなければならないと思います。
ロルフィングの創始者 アイダロルフ
アイダロルフ
ロルフィングは、ニューヨーク州コロンビア大学で生化学を学んだアメリカ人女性、アイダ・P・ロルフ博士が考案した技術です。
ストラクチュアル インテグレーション(Structural Integration)ロルフィングという名前で知られています。
日本ではまだロルファーの人数も少なくあまり知られていませんが、世界的には30年以上前から普及されており、特に欧米ではよく知られています。
1900年代初期にヒューマンポテンシャルムーブメントと言われた時期がありました。人間の可能性を身体的あるいは精神的に追及するというものです。
その時期にアイダロルフはストラクチュアル インテグレーションと言う独自の技術を作り上げました。
きっかけは、娘の音楽教師が事故でピアノを弾けなくなってしまった際に、アイダロルフがその音楽教師の腕を治したことでした。 そのことが噂になり、他では治らないような沢山の病気の人がアイダロルフのもとを訪れました。
アイダロルフは、この時の多くの治療体験を通して気づいたことがありました。
それは、「いたちごっこ」ということです。
一時的に治療を施しても、身体の使い方が同じままでは思うような回復が得られません。 不調が他の部分へ移るばかりでさらに治療を繰り替えさなければならず、繰り返しで抜け出せない、とも思いました。
そこで、もっとより良い状態が永く続く方法を模索しました。
現在のような10回シリーズのロルフィングは、アイダロルフが長年思い描いたものでした。 これは、アイダロルフのオリジナルな技術です。